警視庁が8日に発表した大震災以降の余震を含む人的被災状況によると死者15,854名、負傷者26,992名にのぼり、今なお3,203名もの方が行方不明のままだという。
東日本大震災の発生から1年が経っても34万3900人もの方が遅々として進まない復旧作業や見通しの立たない復興再建への道筋に不安を抱きつつ避難生活をしている現状がある。
今日は全国で犠牲者を悼む式典が予定されているが、私も大地震の発生した午後2時46分には追悼の意を込め鎮魂の黙とうを捧げようと思っている。
さて昨日の続きです。私が「反原発訴訟」を通じて学んだ原発事故の「最悪のシナリオ」が現実のものになった。
大地震発生➡原発緊急停止➡大津波襲来➡全電源喪失➡非常用炉心冷却装置作動せず➡暴走➡炉内圧力急上昇➡ベント(放射性物質放出)➡水ジルコン反応により水素発生➡水素爆発(放射性物質放出)➡炉心溶解(メルトダウン)➡外部注水➡汚染水放出➡循環注水冷却導入➡冷温停止
福島第一原発が大地震を感知し自動停止した3月11日から政府が冷温停止状態を宣言した12月16日までの280日間には77万テラベクレルという途方もない量の放射性物質が大気中に放出され、住民は正確な汚染状況も知らされないまま放射能の危険に曝された。
また、消防車により大量に海水注入された汚染水が海にも流れ出し、その後の東電による高濃度の汚染水の放出もあり空と大地と海は大量の放射能で汚染されるのだった。
政府や東電は一応「冷温停止」を発表しているが、実のところ事故から1年が経過した今でも原子炉の現状がどうなっているのか誰にも分らず、立地点だけでなく全国民が不安に怯える毎日が続いている。
私の元には毎日、全国で「反原発」や「脱原発」を訴える個人や団体から連帯のE-メールが届いている。
勿論、私も原発には反対であるし、このような危険極まりない原発からの脱却を希求する一人であるが、彼らの訴えや主張に何かしら腑に落ちない事が多く正直戸惑っている。
その意見の殆んどが「原発の即時停止」であり、被災地の復旧に大きな障害となっている「がれきの処理」についても地元への受け入れに反対している。
果たして国民は「原発の停止」や「がれき処理拒否」で大量に振り撒かれた放射能の危険から逃れることが出来るのだろうか?
彼らの心情も理解しない訳ではないが、目前の出来ごとだけに眼が奪われているようで、残る疑問が払しょくできず、もろ手を挙げて支援しようという気になれないでいる。
これから計画実行される原発事故の終息から廃炉へ向けた工程や今回の事故の真相解明と対策案の策定、法整備とハード、ソフト面からのシステム整備に作業ロボットや除染技術の研究開発、国際的協力体制の確立等々、解決までにおよそ半世紀を要する課題が横たわる。
福島第一原発から地球上に拡散された放射能の量は、度重なる原爆実験や投棄された核兵器、核施設から排出された放射能の方が遥かに多い。
かつてチェルノブィル原発事故で放出された放射能が日本にも飛来した記録でも分かるように、福島で放出された放射能が風や潮流に乗って世界中に拡散されている。
先日8日には1959年に実験用原子炉で燃料溶融事故を起こした米ロサンゼルス近郊の核施設「サンタスザーナ野外研究所」の跡地において最高で米環境保護局(EPA)が基準とする濃度の千倍近い土壌1キログラム当たり約7300ベクレルの放射性セシウムが検出されたことが報道された。
核実験が行われたネバダやビキニ環礁のあるマーシャル群島の汚染も同様、今や放射能の問題は核保有国や原発のある国の一国一地域だけの問題ではなく、核軍拡競争や経済優先の原子力政策のなれの果ての姿がここにある。
世界中で核の製造を止め、世界中の原発を停めても放射性廃棄物は依然として残り、放射性元素によっては何千何万年もの間、人類の管理下に置かなくてはならない。
そう単純ではないが原発を停めても工夫すれば電力供給に支障が出ることは少ないだろう。確かに原発を止めれば今回のような悲惨な事故は防ぐことは出来る。
しかし、放射性廃棄物は残り続け、やがて原子力産業の衰退とともに「悪魔」のことは忘れ去られ、いつの日か放射性物質が地球環境に流れ出すという「悪魔のシナリオ」が頭から離れない。
人類がこの地球上で生き続けようとするならば、放射性物質という「悪魔の子」が暴れだすことのないよう、どう管理していくかが現世代を生きている我々に問われている課題ではなかろうか。