今年もカラスの観察を始めて一週間が経った。今年は記録的な寒波が襲来し、例年より繁殖期に入るのが少し遅れているようですが、それでも大分市一円の観察区域で営巣している場所を20箇所ほど発見しました。
カラスの行動は、繁殖期と通常期では全く異なります。
では、どいう風に違うのか、見てみましょう。
カラスが群れをなして飛んでいたり、おびただしいカラスが電線に停まって羽根を休めている姿を目にすることがあるかと思いますが、これがカラスの日常です。
写真撮影をしようとカメラを構えると、すぐに逃げられます。
一匹のカラスが飛び立つと、殆どのカラスも飛び立ってしまいますので、群れにはリーダーが居るように感じるかもしれませんが、研究者の間では、カラスは「付和雷同」でリーダー(ボス)は存在しないとされています。
それは群れで飛翔する姿を見ても分ります。
カラスには家族を中心とする数羽~数十羽単位のミコュニティーは存在しますが、雁みたいに隊列を組んで編隊飛行するようなことはなく、思い思いの位置取りで飛び、たまには群れから外れて単独行動を始めるカラスもいるくらいです。
繁殖期に入ると、群れから外れ「つがい」での行動が目につき始めます。
餌場に近く、外敵から身を守りつつ繁殖活動を展開するに適当な市街地の電柱や樹木の上に、1羽か2羽でテリトリィーを主張し陣取合戦の始まりです。
同じ電柱に2羽居ることもありますが、大抵は電柱3~5本の範囲に離れ、テリトリーを主張していることの方が多いようですね。
そして、他の鳥やカラスが接近すると、こんな具合に追い払う行動にでます。
襲っているようにも見えますが、テリトリィー争いですので、何処までも追いかけて攻撃するようなことはありません。
格好の餌場に近く、安定した巣が作れそうな場所での陣取合戦は熾烈ですが、結局は若くて勢いのあるカラスの夫婦が最も良い場所を確保することになるのです。
テリトリィーは広い方がより安全に繁殖が可能ですが、餌の多い区域では20~30m位まで接近する場合もあります。この場合、大抵はファミリー(親子兄弟)とみてよいでしょう。
テリトリィー争いが一段落すると営巣(巣作り)が始まります。
営巣材は樹木の小枝を好みますが、市街地には適当な小枝も少なくなっていますので、近年はクリーニングハンガーや針金の類も良く使われます。
クリーニングハンガーは庭先の物干し竿から失敬するのですが、電柱等の営巣材が落下しやすい場所ではハンガー部分がポルト等に掛り易いようで、これらを上手く組合わせて巣を作っていきます。
私が観察した中には、洗濯物のシャツが掛ったままのハンガーを咥えて飛ぶ滑稽な姿も目撃しました。
また、公園の樹木の枝や庭木の枝をくわえ、ぶら下がるようにして枝を折っているのを見掛けたこともあります。
大体、巣の形が整うと、今度は内装に取り掛かります。
ベッドはフカフカですよ。
柔らかい鳥の羽毛や苔の類から綿なんかも使っています。
倉庫に積んであった古い布団を破いて、中の綿を啄ばんで持って行ったのを目撃したこともあります。
巣作りが終わると、いよいよ産卵です。通常4個前後の卵を産みますね。
色は少し緑掛った褐色のまだら模様で大きさはウズラの卵くらいですが、殻は非常にもろく、指で摘むとすぐに潰れてしまいます。
産卵するとメスが抱卵して卵を温めます。下方から観察するとカラスの尻尾だけが起って見えるのが抱卵期の特徴です。
関東地方では4月~7月が繁殖期とされていますが、大分では2月初旬~5月末が繁殖期です。
過去に12月のクリスマスの頃、気の早いカラスが産卵したことがありましたが、その後雪が降ったりと寒波が押し寄せ、孵化することはありませんでしたが・・・
抱卵から3週間もすると孵化します。
生まれ出たその日はこんなに小さいですが、雛の成長は著しく、見る間にハトくらいに成長します。
この間は、雄が頻繁に幼虫やミミズなどの餌を頻繁に運び、敵が近付くと敵意むきだしに威嚇してきます。
(威嚇行動は産卵以降に多くみられるが、孵化してからが最も警戒するので、むやみに刺激しない方が良い)
最初は毛をむしったブロイラーみたいな格好の雛も、1週間もすると黒い産毛が生えてきて、さらに3週間もするとほとんど親鳥みたいな真黒な羽根に成長します。
この頃になると、大きさも親鳥と見間違うほどになりますが、口の中が赤いのとクチバシが黄色いので判別できます。
たまに巣から落下して死んでいる雛を見掛けることもありますが、生まれて1ヶ月が過ぎる頃になると地上に降りていることもあります。
しかし、こんな時期の雛には絶対に近づかない方が賢明です。
必ず、激しい攻撃に遭いますから・・・
不用意に近づいた犬や猫が親鳥に激しく攻撃されている場面もしばしば見掛けましたが、カラスにとって一番怖いのは人間。
ですから攻撃といっても基本的には威嚇だけと思っていて間違いありません。
巣立ち前の時期に不用意に通りかかると、頭上をかすめ飛んでみたり、時には頭や肩を蹴ったりすることもありますが、ヒチコックの映画のようなことはありませんのでご安心ください。
ビックリして転んだり、車に跳ねられたりする方が心配です。
まだまだ、カラスの話題は山ほどありますが、長くなりそうなので今日はこのくらいにしておきましょう。
カラスのことを、もっと知りたい方は科学ジャーナリストの「柴田佳秀」先生が主宰する ↓ こちら
「シバラボ」柴田自然研究所のホームページに詳しいことが述べられているので、「青文字」をクリックしてご覧下さい。